磁性材料:分子界面を用いてストーナー基準を打ち破る
Nature 524, 7563 doi: 10.1038/nature14621
室温で強磁性を示すのは3元素だけ、すなわち鉄、コバルト、ニッケルという3つの遷移金属だけである。例えば鉄とマンガンは周期表で隣り合っており、両元素とも3d殻が満たされていないにもかかわらず、なぜ鉄は強磁性体であってマンガンは強磁性体ではないのかが、ストーナー基準によって説明される。この基準によると、自発的なスピン秩序化が現れるには、状態密度と交換積分の積が1より大きくならなければならない。今回我々は、反磁性体の銅や常磁性体のマンガンなどの非強磁性材料の電子状態を変えることでストーナー基準を克服し、非強磁性体を室温で強磁性体にできることを実証する。この効果は、金属薄膜とC60分子層の界面を通して実現される。この創発的な強磁性状態は数層の金属層にわたって存在するが、試料が厚くなると、材料のバルク特性のせいで消失する。誘起された磁化は磁気測定法によって容易に測定できるが、低エネルギーミューオンスピン分光法によって、試料中に打ち込まれた低エネルギーミューオンの脱偏極過程を調べることで、磁化分布に関する知見が得られる。この手法によって、金属と分子の界面や界面近傍に局所的なスピン秩序状態が存在することが示された。また、密度汎関数理論シミュレーションによって、電子移動に起因する金属原子の磁気硬化に基づく機構が示唆された。この機構によると、分子カップリングを活用することで、有機半導体などの豊富に存在する無毒成分を用いた磁性メタマテリアルを設計できる可能性がある。従って、分子界面での電荷移動を用いて、スピン偏極、すなわち磁化を制御できる可能性があり、エレクトロニクス、電力、計算への応用向けデバイスを設計するための結果も得られている。

