感染症:季節性インフルエンザウイルスの連続抗原変異(ドリフト)に伴う地球規模での流行パターンは、多様性を示す
Nature 523, 7559 doi: 10.1038/nature14460
ヒト季節性インフルエンザウイルスの新しいバリアントについて、その出現や流行の時間的・空間的パターンを解明することは、科学研究や人々の健康にとって重要な課題である。インフルエンザA型(H3N2)ウイルスの地球規模の流行パターンは詳しく研究されているが、A型(H1N1)ウイルスやB型ウイルスの流行パターンはほとんど調べられていない。今回我々は、2000~2012年に世界各地で分離された9604株のヒト季節性インフルエンザウイルスについて、ヘマグルチニンの遺伝子塩基配列の解析に基づき、A型(H1N1)ウイルス(~2009年)、B型ウイルス(ビクトリア系統)、B型ウイルス(山形系統)の地球規模の流行パターンが、A型(H3N2)ウイルスとは大きく異なることを明らかにした。A型(H3N2)ウイルスは、非流行期には各地域にウイルスは持続的に存在せず、東アジア・東南アジアから新しい抗原変異ウイルスが繰り返し出現している。これに対して、A型(H1N1)ウイルスとB型ウイルスは、複数の抗原変異ウイルスが、数年間にわたって存在し続け、地球規模での動態は複雑であり、東アジア・東南アジアが新しい変異体の供給・拡大に果たす役割は限定的である。A型(H3N2)ウイルスに比べてA型(H1N1)ウイルスとB型ウイルスの方が地球規模で動く頻度が低いことは、後者の抗原進化速度が遅いこと、感染年齢が低いこと、流行の規模が小さく流行頻度も低いことと、よく符合する。地球規模での流行パターンの違いをもたらす可能性のある要因として、小児の旅行頻度が低いことを組み込んだ詳細な流行数理モデルは感染年齢の違いをよく反映しており、ウイルスの進化と疫学、ヒトの行動との間に複雑な関わりがあることを示唆している。

