分子生物学:遺伝子量補償の際にコンデンシンが引き起こすX染色体のトポロジー再構成
Nature 523, 7559 doi: 10.1038/nature14450
ゲノムの三次元構造は遺伝子発現の調節に極めて重要な役割を果たしているが、染色体の高次構造を決める装置や仕組みはほとんど解明されていない。今回我々は、ゲノム規模の染色体コンホメーション捕捉解析、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)とRNA-seqを行って、線虫の一種であるCaenorhabditis elegansのゲノムの包括的な三次元(3D)地図を作製し、X染色体の遺伝子量補償(XX型の雌雄同体とXO型の雄との遺伝子発現を均衡させる現象)について詳細に調べた。コンデンシン複合体の1つである遺伝子量補償複合体(DCC)は、雌雄同体の2本のX染色体両方に、塩基配列特異的なrex(recruitment element on X)部位を介して結合し、染色体全体の遺伝子発現を半分に抑制する。DCCのコンデンシンサブユニットの大半は、他のコンデンシン複合体でも作用し、有糸分裂染色体、減数分裂染色体の凝縮と分離を制御する。野生型胚とDCC欠失胚の染色体の構造の比較によって、DCCが雌雄同体のX染色体を再構成して、常染色体とは異なった性特異的なコンホメーションをとらせることが明らかになった。遺伝子量が補償されたX染色体は、哺乳類のトポロジカル関連ドメイン(TAD)に似た、自己相互作用するドメイン(~1 Mb)で構成されている。X染色体上のTADは常染色体上のものより境界がはっきりしていて、間隔に規則性がある。X染色体上のTADの境界の多くは、親和性が最も高いrex部位と一致し、DCC欠失変異体では減少するか、完全に失われ、そのためX染色体のトポロジーが常染色体に似たコンホメーションに変わる。rex部位は、DCCに依存した長距離相互作用に関わり、最も多く見られる相互作用は、DCCに依存したTAD境界でrex部位の間に生じている。これらの結果は、DCCが最も親和性の高い結合部位間の相互作用を介して新しいTAD境界を形成してはっきりとしないTAD境界を補強し、それによりX染色体のトポロジーが再形成されることを示している。このモデルから予想されるように、DCCに依存したTAD境界で内在性rex部位をCRISPR/Cas9を用いて欠失させると、境界が大幅に減少する。このように、DCCは染色体規模で遺伝子発現を調節するとともに、X染色体に独特な高次構造を作らせている。

