集団遺伝学:ステップからの大移動がヨーロッパでのインド・ヨーロッパ語族の成因の1つとなった
Nature 522, 7555 doi: 10.1038/nature14317
我々は、8000~3000年前に生存していたヨーロッパ人69人の古代DNAライブラリーについて、約40万個の一塩基多型を標的として濃縮することにより、全ゲノムデータを作成した。これらの位置での濃縮によって、全ゲノムの古代DNA解析に必要な配列解読量が中央値にして約250分の1に軽減されるため、先行研究と比較して1桁多い人数を調べることが可能となり、古代の人口動態に関する新たな手掛かりを得ることができる。その結果、西ヨーロッパの集団と極東域ヨーロッパの集団が8000~5000年前に逆の道筋をたどったことが明らかになった。ヨーロッパで新石器時代が幕を開けた約8000~7000年前、現在のドイツ、ハンガリーおよびスペインに当たる地域には先住の狩猟採集民とは異なる初期農耕民の血縁集団が出現したが、ロシアには約2万4000年前のシベリア人との類似性が高い独特の狩猟採集民集団が生活していた。約6000~5000年前までに、ヨーロッパの多くの地域に広がった農耕民では狩猟採集民の系統の方が先住農耕民の系統よりも多くなっていたが、ロシアのヤームナヤ文化のステップ遊牧民では、先行するヨーロッパ東部の狩猟採集民だけでなく近東起源の集団の血も受け継がれていた。東ヨーロッパと西ヨーロッパの集団は約4500年前に接触し、ドイツで見つかった後期新石器時代の縄目文土器文化の人々では約75%がヤームナヤの系統であったことから、ヨーロッパの東部辺縁域から中央域への大規模な移動が立証された。このステップの系統は、少なくとも約3000年前まで標本としたヨーロッパ中央部の古代人全てに受け継がれており、現代のヨーロッパ人にも広く継承されている。これらの結果は、ヨーロッパのインド・ヨーロッパ語族の少なくとも一部がステップ起源だとする説の裏付けとなる。

