工学:動物のように適応できるロボット
Nature 521, 7553 doi: 10.1038/nature14422
ロボットは、多くの産業、中でも注目すべきは製造業を変革し、捜索救助、災害対応、健康管理、輸送など社会に多大な利益をもたらす力がある。ロボットは、遠く離れた惑星から深海まで人が行くことのできない環境の科学調査を行う極めて貴重なツールでもある。工場の外のより複雑な環境においてロボットを広く採用する際の主要な障害は、ロボットの脆弱性である。動物はけがに迅速に適応するが、現在のロボットは、損傷したとき、「既存の枠組みにとらわれずに考えて」損傷を補う行動を見いだすことができない。ロボットの能力は事前に指定された自己検出能力に限定されており、予測された故障モードしか診断できず、起こり得る全て種類の損傷に対して緊急時対応策をあらかじめプログラムしておく必要があるが、これは複雑なロボットでは非現実的である。ロボットの脆弱性を減らす有望な方法は、損傷に応じて適切な行動をロボットに学ばせることだが、現状の技術では制約された狭い探索空間でも時間がかかる。今回我々は、自己診断やあらかじめ決められた緊急時対応策を必要とせずに、広い探索空間においてロボットが2分以内に損傷に適応できるようにする知的な試行錯誤アルゴリズムを提示する。このアルゴリズムは、ロボットが配置される前に、新しい技術を使って良い成績の行動空間の詳細なマップを作成する。このマップは、ロボットが行える行動とその価値に関する事前知識を表している。ロボットは、損傷するとこの事前知識を使って試行錯誤学習アルゴリズムを導き、知的実験を行って、この損傷を補う行動を迅速に探し出す。脚の損傷、破壊、欠落を含む5通りのやり方で傷ついた脚型ロボットや、14通りのやり方で関節が壊れたロボットアームに対して、適応に成功したことが実験によって明らかになった。この新しいアルゴリズムによって、よりロバストで有能な自律ロボットが可能になり、けがに適応するため動物が使う原理が明らかになる可能性がある。

