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細胞生物学:C. elegansの加齢過程で見られるマイトファジーとミトコンドリア生合成の協調
Nature 521, 7553 doi: 10.1038/nature14300
ミトコンドリア量維持の障害は多様な種類の細胞中で見られ、ヒトの多くの病態や加齢の際の共通した特徴である。ミトコンドリアの生合成と損傷を受けたミトコンドリアあるいは余分なミトコンドリアの除去とを協調させて細胞の恒常性を維持する仕組みはよく分かっていない。今回我々は、ミトコンドリアを標的として分解する選択的な種類のオートファジーであるマイトファジーが、ミトコンドリア生合成と連動して、線虫の一種のCaenorhabditis elegansでミトコンドリア含有量と寿命を調節していることを示す。C. elegansでは、DCT-1がストレス条件下でマイトファジーと寿命を確保する重要な介在因子であることが分かった。転写因子SKN-1は、ミトコンドリア生合成遺伝子の発現調節とDCT-1発現増強によるマイトファジー調節の両方に関わっていて、マイトファジーが障害されるとストレス抵抗性が損なわれ、ミトコンドリアではSKN-1を介する逆行性のシグナル伝達が引き起こされる。以上の結果は、代謝シグナルを統合してミトコンドリアの生合成と代謝回転とを協調させる恒常的フィードバックループの存在を明らかにしている。加齢中にこれら2つの過程が連動しなくなることは、損傷を受けたミトコンドリアの過剰増殖と細胞機能低下の一因となる。

