海洋学:南シナ海における内部波の形成と消滅
Nature 521, 7550 doi: 10.1038/nature14399
内部重力波は、海浜で砕けるよく知られた表面重力波に似た水面下の波で、海洋の至る所に存在する。鉛直および水平方向に強い流れを伴い、砕ける際に乱流混合が起こるため、こうした波は、光合成のための栄養素の供給、堆積物や汚染物の輸送、音波の伝播など海洋過程全般に影響を及ぼし、海洋における人工構造物に危険をもたらすこともある。内部重力波は、主に風と潮汐によって生成され、砕けるまでに、発生源から数千キロメートル伝播することがあるため、観測したり、その影響に敏感な数値気候モデルに組み込んだりすることが困難になっている。10年以上の間、さまざまな研究の対象は南シナ海であった。南シナ海のルソン海峡では、最も強力であることが知られている海洋の内部重力波が生成されており、西に向かって伝播するにつれて急激に強まっている。しかし、ルソン海峡では海流の状態が極端なため測定が困難で、in situでの観測が不十分なことから、こうした波の生成機構、変動、エネルギー収支については混迷が続いてきた。本論文では、新たな観測データと数値モデルを用いて、(1)内部波は勾配の大きな水力学的現象によって生じるのではなく正弦波的な擾乱として始まることを示し、(2)生成域には200 mを超える高さの内部砕波が存在し、外洋域の1万倍以上のレベルの乱流を生じさせることを明らかにし、(3)黒潮の西岸境界流が、ルソン海峡で生じる内部波の場を著しく屈折させることを確定し、(4)モデルによるエネルギーフラックスと観測されたエネルギーフラックスが、2倍の範囲で一致することを立証して、この海域における観測に裏付けられたエネルギー収支が得られることを示す。まとめると、今回の知見は、海盆規模の内部重力波のゆりかごから墓場までの描像を与えるもので、数値気候予測における内部重力波の表現のさらなる改善の裏付けとなるだろう。

