微生物学:熱帯熱マラリア原虫によるマラリアで見られるアルテミシニン耐性の分子機構
Nature 520, 7549 doi: 10.1038/nature14412
アルテミシニンは、抗マラリア薬の基盤である。アルテミシニン耐性の出現と蔓延は、マラリアによる世界的負荷の軽減に関して最近達成された成果を帳消しにするリスクをもたらし、マラリアの将来の管理と全世界レベルでの根絶とを危うくしている。全ゲノム関連解析(GWAS)により、アルテミシニン耐性に関連するマラリア原虫の遺伝子座が明らかになっている。しかし、アルテミシニンの生化学的標的に関しては一致した見解は得られていない。また、このような標的とGWASで突き止められた遺伝子との間の関連の有無や関連の仕組みは明らかになっていない。今回我々は、アルテミシニンが熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PfPI3K)の強力な阻害物質であることの生化学的および細胞レベルでの証拠を示し、予想外の作用機序を明らかにする。臨床で得られた耐性株では、PfPI3Kのレベル上昇が、アルテミシニン耐性の主要なマーカーである熱帯熱マラリア原虫Kelch13(PfKelch13)のC580Y変異と関連していた。PfPI3Kのポリユビキチン化とそのPfKelch13への結合は、PfKelch13変異によって減少し、それによってPfPI3Kのタンパク質分解が制限されて、その結果このキナーゼのレベルが上昇するのに加えて、その脂質産物であるホスファチジルイノシトール 3-リン酸(PI3P)も増加した。臨床株および実験的操作を加えた株の両方に加え、非同一遺伝子株にもわたって、PI3Pレベルがアルテミシニン耐性の予測因子であることが見いだされた。PI3Pのレベル上昇は、PfKelch13変異がない場合にアルテミシニン耐性を誘導したが、PfKelch13による調節に対する応答性は維持された。遺伝子導入によって余分なキナーゼを発現させると耐性が生じるというPI3P依存性シグナル伝達についての証拠を示す。まとめると以上の結果は、PI3Pがアルテミシニン耐性の重要なメディエーターであり、またPfPI3Kはそれだけでマラリア根絶の重要な標的となることを示している。

