免疫学:ミトコンドリアDNAのストレスは抗ウイルス自然免疫応答をプライミングする
Nature 520, 7548 doi: 10.1038/nature14156
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は1細胞当たり数千コピー存在することが普通で、核様体と呼ばれる数百個の高次構造中に詰め込まれている。豊富に存在するmtDNA結合タンパク質のTFAM(transcription factor A, mitochondrial)が、核様体の構造、存在量と分離を調節している。mtDNAを完全に除去してしまうと、酸化的リン酸化が強く障害されて、カルシウム依存性ストレスシグナル伝達や適応的な代謝応答が引き起こされる。しかし、mtDNAの不安定性は、多数のヒト疾患や老化で観察される生理的といえるストレスであるため、それに対する細胞応答ははっきり特徴付けられていない。今回我々は、TFAMの欠損によって引き起こされる中程度のmtDNAストレスが細胞質の抗ウイルスシグナル伝達に関わっていて、インターフェロン刺激遺伝子群の一部の発現を上昇させることを示す。機構的には、mtDNAの核様体への詰め込みに異常が生じると、これがmtDNAの細胞質ゾルへの漏出を促進し、mtDNAは細胞質ゾルでDNAセンサーcGAS(別名MB21D1)に結合してSTING(別名TMEM173)–IRF3依存性のシグナル伝達を促進する。これがインターフェロン刺激遺伝子群の発現を上昇させ、I型インターフェロン応答を増強し、広範囲にわたるウイルス耐性をもたらすことが分かった。さらに、ヘルペスウイルスはmtDNAストレスを誘導し、感染過程では抗ウイルスシグナル伝達やI型インターフェロン応答がmtDNAストレスによって増強されることも明らかになった。今回の結果は、ミトコンドリアが自然免疫に中心的な役割を果たしていることをさらに実証したもので、mtDNAストレスが抗ウイルスシグナル伝達の細胞内在性起動装置であることを明らかにし、また、mtDNA恒常性の細胞による監視が、標準的なウイルス感知機構と協働して、抗ウイルス自然免疫を十分に機能させていることを示唆している。

