神経科学:恐怖記憶の想起に関わる回路の時間的変化
Nature 519, 7544 doi: 10.1038/nature14030
動物は恐怖記憶のおかげで危険を避けることができ、生存の確率を高められる。恐怖記憶は学習後長い時間がたってからでも想起できるが、想起を担う回路が時間とともにどう変化するかは、ほとんど分かっていない。今回我々は、聴覚的に条件付けした恐怖の、学習から長い時間(24時間、7日、28日)がたってからの想起には、ラットの背側視床正中核が必要だが、学習後早い時点(0.5時間、6時間)での想起には必要ないことを明らかにする。これと一致して、背側視床正中核の一部である視床室傍核(PVT)では、長時間たった遅い時点でc-Fosの発現が増加しており、PVTが恐怖の想起に徐々に関わっていくことを示している。それに応じて、学習後に時間経過とともにPVTニューロンの音に対する条件反応が増大した。恐怖の想起に必要な前辺縁(PL)前前頭皮質からは、PVTに高密度にニューロンが投射している。遅い時点での記憶の想起により、PVTに投射するPLニューロンが活性化され、光遺伝学的にこれらの投射ニューロンを抑制すると遅い時点での記憶想起が阻害されるが、早い時点での想起は阻害されない。これとは対照的に、扁桃体基底外側部へのPL入力を抑制すると、早い時点での記憶想起が阻害されるが、遅い時点での想起は阻害されないことから、記憶想起の回路が時間に応じて変わることが示唆される。また遅い時点での記憶想起により、扁桃体中心核に投射するPVTニューロンも活性化され、これらの投射を遅い時点で抑制すると持続的に恐怖が弱まるが、早い時点での抑制ではそうならなかった。従って、PVTは恐怖の長期記憶の想起と維持を担う皮質–扁桃体回路に関わる、重要な視床内のノードとして働いている可能性がある。

