量子物理学:極低温原子を用いたハバード模型における反強磁性相関の観測
Nature 519, 7542 doi: 10.1038/nature14223
光格子中の極低温原子には、高温超伝導など、多体物理学におけるいくつかの最重要問題のより深い理解に寄与する大きな可能性がある。ハバード模型は、周期格子上を動くフェルミ粒子を単純化して表すもので、これによって、銅酸化物超伝導の本質的な要素の細部が記述されると考えられている。この模型によって、相互作用によって生じるモット絶縁状態や反強磁性(AFM)状態を含む、銅酸化物に共通する多くの特徴が記述される。極低温原子からなる2スピン成分のフェルミ気体で満たした光格子は、容易に調節可能なパラメーターを持つハバード模型を忠実に実現できるため、相図を系統的に調べるプラットフォームとなる。しかし、強相関相は、原子を磁気交換エネルギーと同程度の温度まで冷却する必要があるため実現されておらず、また信頼できる温度測定法が存在しないことによっても実現が阻まれてきた。今回我々は、光のスピンに敏感なブラッグ散乱を実証して、AFM相転移温度の1.4倍までの温度において、三次元ハバード模型が実現している時のAFMスピン相関を測定した。この温度領域は単純な高温級数展開が妥当となる範囲を超えていることから、今回の実験は、特に金属密度において、現行の数値手法の能力の限界に近づいている。我々は、個々の格子ビームの閉じ込めが青方離調レーザービームによって補償される光格子補償技術を用いて、こうした低温に到達した。格子中の原子の温度は、光散乱を行列式量子モンテカルロシミュレーションおよび連結クラスター展開数値計算の結果と比較することによって推定された。格子補償をさらに改良すれば、もっと低い温度が得られる可能性があり、光散乱温度測定法とともに、二次元ハバード模型の擬ギャップ領域や相関金属状態など、物質の新しい量子状態を生成し特性評価する道を開くと思われる。

