生物工学:合成アミノ酸に依存するよう改変したゲノム再コード化生物
Nature 518, 7537 doi: 10.1038/nature14095
高付加価値の医薬品や燃料、化学物質を作るために、研究や工業系で遺伝子組換え生物(GMO)が用いられることが増えている。遺伝的隔離や内在的な生物学的封じ込めは、こうした閉鎖系を確保したり、開放系でのGMOの安全な利用(バイオレメディエーションやプロバイオティクスなど)を可能にしたりするのに不可欠なバイオセーフティー策だと考えられる。細胞の増殖を制御するために、必須遺伝子の調節や、誘導可能な毒素スイッチ、栄養要求性の改変といった安全防護策が考案されているが、これらの方策は必須代謝産物を補い合う栄養共生や必須遺伝子の漏出発現、遺伝子変異によって支障を来す。本論文では、複数の必須遺伝子の発現を外部から供給される合成アミノ酸(sAA)に依存させることで増殖を制御できるようにした、一連のゲノム再コード化生物(genomically recoded organism;GRO)の作製について述べる。我々は、TAGコドンと終結因子1を全く持たない大腸菌(Escherichia coli)由来GROの染色体に、超好熱メタン生成古細菌Methanocaldococcus jannaschiiの1組のtRNA:アミノアシルtRNAシンテターゼ対を導入して、このGROに、TAGコドンをsAA専用のセンスコドンに転換する直交翻訳成分を付与した。多重自動ゲノム工学法(MAGE)を用いて22個の必須遺伝子にインフレームのTAGコドンを導入し、それが発現されるとフェニルアラニン由来の合成アミノ酸が取り込まれるようにした。単離したsAA依存性の多様体60株のうち、注目すべき株は1つあり、この株ではMurG、DnaAおよびSerSの保存された機能性残基に3個のTAGコドンがあり、標的tRNAに欠失を含んでいるが、着実な増殖を維持し、約1011個の細胞を固形培地で7日間、あるいは液体培地で20日間培養しても、逸出頻度は検出できないレベルだった。これは、既存の生物学的封じ込めの手法に比べて大幅な改善である。今回作製したsAAに依存する合成栄養要求株は、環境での増殖試験では、栄養共生によって救済されることはなかった。これらの栄養要求性GROは、遺伝子の水平伝播を妨げることで遺伝的隔離をもたらす通常とは別の遺伝コードを持ち、また、合成した生化学的構成要素の利用に依存することで、GMOと環境とを隔てる翻訳直交性の障壁を高めるものである。

