分子進化学:KRABジンクフィンガー遺伝子ZNF91/93とSVA/L1レトロトランスポゾンの間の進化的軍拡競争
Nature 516, 7530 doi: 10.1038/nature13760
霊長類のゲノムは、進化の過程で度重なるレトロトランスポゾンの挿入により形を変えてきた。そうした挿入事象のたびに、宿主は最終的に、レトロトランスポゾンの転写を抑制してそれ以上の挿入を防ぐ方法を見つけ出す。マウスの胚性幹細胞では、レトロトランスポゾンの転写抑制にKAP1(別名TRIM28)とその抑制性複合体が必要である。これらを標的部位へと誘導できるのがKRABジンクフィンガー(KZNF)タンパク質であり、その1つであるマウス特異的ZFP809は、組み込まれたマウス白血病ウイルスDNAエレメントに結合し、KAP1を引き寄せてこのエレメントを抑制する。KZNF遺伝子は霊長類で最も急激に成長した遺伝子ファミリーの1つであり、このファミリーの拡大によって、霊長類は新たに出現したレトロトランスポゾンに対処できると仮定されている。しかし、ヒトゲノムで現在も活性を持つSVA(SINE-VNTR-Alu)やL1(long interspersed nuclear element 1)などのレトロトランスポゾンに対抗しているKZNF遺伝子がどのようなものであるかは、まだよく分かっていない。今回我々は、これら2つのレトロトランスポゾンファミリーがヒトの祖先ゲノムに広がり始めた直後に、これらを抑制するために、2種類の霊長類特異的KZNF遺伝子が急激に進化したことを示す。ZNF91は、1200万~800万年前に一連の構造変化を経て、SVAエレメントを抑制できるようになった。ZNF93はもっと前に進化して霊長類のL1系統を抑制していたが、約1250万年前にL1PA3サブファミリーのレトロトランスポゾンが、ZNF93の結合部位をなくすことでZNF93による制限を受けなくなった。我々のデータは、KZNF遺伝子の拡充が新たに出現したレトロトランスポゾン群の活性を制限し、その後、これらのレトロトランスポゾンが変異して抑制を逃れるというモデルを裏付けている。このサイクルは、系統特異的なKZNF遺伝子が急激に増えたことの説明になると考えられる。

