神経科学:ヒトTRAAK K+チャネルのゲーティングと機械感受性の物理的機構
Nature 516, 7529 doi: 10.1038/nature14013
機械感受性イオンチャネルの物理的力による活性化は、触覚、聴覚、痛覚などの多くの生理的過程の基盤となっている。TRAAK(別名KCNK4)イオンチャネルは、two-pore domain K+(K2P)チャネルファミリーの神経で発現されるメンバーに属していて、機械感受性である。TRAAKは、マウスでは機械刺激および温度刺激による侵害受容の制御に関わっている。TRAAKは、機械感受性が脂質二重層を介して直接伝達される細胞膜張力作動性チャネルである。しかし、TRAAKチャネルのゲーティングと機械感受性の分子機構は明らかになっていない。今回我々は、TRAAKチャネルについて、イオンが通過している状態とイオンが存在しない状態のコンホメーションの結晶構造を示す。これら2つの状態は、イオン通過経路に沿ったイオンの有無によって決められた。イオンが通過していない状態では、脂質のアシル鎖の1つが、膜内層中で側方に開いている径5 Åの開口部を介してチャネル内の空洞に到達し、物理的にイオン通過を遮断する。イオンが通過中の状態では、膜貫通へリックスの1つ(TM4)が中央ヒンジ付近で回転して細胞膜内の開口部を閉鎖し、これによって空洞の脂質による遮断が阻止され、イオンが進入できるようになる。機械感受性K2Pに固有の、膜と相互作用するTM2–TM3セグメントがTM4に対してさらに回転することで、通過可能なコンホメーションがさらに安定化される。2つの状態の構造の比較から、TRAAKの機械感受性の生物物理学的機構が明らかになり、イオン通過可能な状態での横断面積が2.7 nm2にまで拡大されて、コンホメーション間での膜の張力に依存するエネルギー差を生み出すと予想され、これが力による活性化を促進する。我々の結果は、脂質二重層の張力が真核生物イオンチャネルのゲーティングと機械感受性の制御に使われる仕組みを明らかにしている。

