神経科学:Piezo2はマウスの触覚における主要な機械力変換器である
Nature 516, 7529 doi: 10.1038/nature13980
触覚は、機械エネルギーを電気信号に変換することにより、我々を取り巻く物理的環境についての重要な情報を与える。触覚の感知は、機械的に活性化された陽イオンチャネルから開始されると考えられているが、哺乳類でのこのようなチャネル分子の実体はまだ解明されていない。Piezo2は、機械力によって活性化される順応の速いイオンチャネルで、後根神経節の感覚ニューロンの一部と、皮膚のメルケル細胞–神経突起複合体と呼ばれる機械受容器で発現されている。メルケル細胞がPiezo2を使って脊椎動物の機械感覚に役割を果たしており、特に、神経支配する感覚ニューロンによって送られる電流の整形に関わっていることはすでに実証されているが、触覚の重要な性質はメルケル細胞の活性がないことで影響を受けない。本論文では、成体感覚ニューロンとメルケル細胞の両方でPiezo2が欠失したマウスでは、触覚が大幅に損なわれることを明らかにする。我々は、Piezo2が、有毛皮膚、無毛皮膚の両方に分布する幅広い低閾値機械受容器の末梢側末端に位置することを明確にした。Piezo2遺伝子を条件付きノックアウトしたマウスでは、後根神経節培養ニューロンで機械刺激によって活性化される順応の速い電流がほとんど見られず、皮膚神経標本を使ったex vivo研究では、低閾値機械受容器の機械刺激感受性がPiezo2に強く依存していることが明らかになった。この細胞表現型は、前例のない行動表現型と強く関係していた。つまり複数の行動試験で、軽い接触がほぼ完全に感知できなくなったが、他の体知覚機能には影響がなかったのである。我々の結果は、順応が速く、in vitroで機械刺激により活性化されて電流が流れる単一のイオンチャネルが、無害な軽い接触の感知に関わるほとんどの低閾値機械受容器の機械感受性をもたらしていることを明確に示している。軽い触刺激と強い痛みの感覚とが分離できることが分かったことは、やはり機械刺激で活性化されるまだ見つかっていないイオンチャネルが、有害な機械刺激(痛み)感受性を受け持っている可能性を示唆している。

