植物科学:春化状態の継代遺伝を防ぐエピジェネティックな再プログラム化
Nature 515, 7528 doi: 10.1038/nature13722
植物や哺乳類の正常な発生には、配偶子や胚におけるエピジェネティック状態の再プログラム化が極めて重要である。植物の生殖系列は花の体細胞組織から生じるので、発生の際、あるいは外部刺激への応答の間に特定の遺伝子座に蓄積してきたクロマチン修飾を消去することが必要となる。この過程が無効となると、ある世代から次の世代へエピジェネティック状態が受け継がれてしまう。だが、ほとんどの場合、蓄積したエピジェネティック修飾は、次世代に行く前に効率よく消去される。植物におけるエピジェネティック状態再プログラム化の重要な実例の1つが、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)で見られる花成抑制因子遺伝子座FLCの発現のリセットである。春化と呼ばれる過程では、持続的に低温にさらされることでFLCがエピジェネティックにサイレンシングされる。しかし、この遺伝子座は種子発生の完了までには再活性化されるので、どの世代でも、春化は確実に必要になる。春化によって誘発され、ポリコームが関わるエピジェネティックな遺伝子サイレンシングについては詳細に解明されているが、それに対してFLCの再活性化機構の方は、ほとんど分かっていない。今回我々は、jumonjiドメイン含有タンパク質ELF6に生じた機能低下変異によって生殖組織におけるFLC再活性化が障害され、これが部分的春化状態の遺伝につながることを明らかにした。ELF6はH3K27me3デメチラーゼ活性を持っていて、植物体内で変異によってこの酵素活性が低下した。次の世代の変異植物で、FLC遺伝子座のH3K27me3レベルが野生型に比べ高いままになり、FLC発現が低いままになったことは、これらの知見と一致する。我々のデータは、植物や哺乳類の胚のエピジェネティック状態再プログラム化に、H3K27の脱メチル化が古くからの役割を担っていることを明らかにしている。

