生態学:個体の能力向上と選択的死亡が生涯にわたる渡り能力を形作る
Nature 515, 7527 doi: 10.1038/nature13696
毎年、細菌からヒトまで膨大な数の生物が移動しており、そうした渡りの生物学に関する研究は、リモートセンシング技術がこれまでになく高性能になったことで急激に発展している。しかし、ある生物の渡り能力がその一生を通じでどのように発達するかについては、ほとんど分かっていない。これまで、年齢による変化は体系的にほぼ単純化され、初めて渡りを行う新生の若齢個体と、年齢の分からない成体とに二分して比較されていた。こうした比較によって、成体の渡り能力が若齢個体よりも優れていることがたびたび強調されてきたが、このような変化が徐々に起こるのか、突然起こるのかは不明で、この変化がその個体自体の能力向上によるのか、渡り能力の劣る個体の選択的死亡によるのか、あるいはその両方なのかも分かっていない。今回我々は、全球測位システム(GPS)衛星追跡法で個体を長期監視できる機会を活用して、ある猛禽類の1~27歳の計92個体による364回の渡り行動例について、個体ごとのデータと横断面データを組み合わせて調べた。すると、渡り行動がこれまで考えられていたよりも漸進的でより長時間かけて着実に発達していくことが分かり、これを促進するのは個体の能力向上と選択的死亡の両方であって、それらが働くのは主に幼鳥期と繁殖前の渡りの最中であることが明らかになった。個体の年齢によって用いる渡り戦略は異なり、追い風を利用したり偏流に対処したりする能力にも差があった。全ての個体は同年齢の仲間との競争にさらされているようで、競争の結果は主に早く出発できるかどうかによって決まり、その後の群れへの加入、生殖および生存に影響する。気候変動や人為活動が若齢個体の渡りにどう影響するかを解明することは、絶滅の危機にある多くの渡り鳥の減少を予測し、対処するカギになると考えられる。

