神経科学:ヒト神経細胞の三次元培養によるアルツハイマー病モデル
Nature 515, 7526 doi: 10.1038/nature13800
アルツハイマー病は、最もよく見られる認知症の型であり、アミロイドβ斑と神経原繊維変化という2つの病理学的特徴が見られる。アルツハイマー病のアミロイド仮説では、アミロイドβペプチドの過剰な蓄積が、過剰にリン酸化されたタウの凝集体からなる神経原繊維変化を引き起こすとされている。しかし、これまで、ヒトの神経細胞を用いた疾患モデルで、これらの2つの病理学的事象の連続的な関連が示されたものは1つもない。家族性アルツハイマー病(FAD)の変異を持つマウスモデルでは、アミロイドβによって誘導されるシナプス異常や記憶障害が見られるが、特徴的な病的神経原繊維変化など、アルツハイマー病の他の主要な病理学的事象が完全に再現されるわけではない。アルツハイマー病患者由来のヒトニューロンでは、毒性のアミロイドβ種やリン酸化タウのレベルが上昇していることは示されているが、アミロイドβ斑あるいは神経原繊維変化は実証されていなかった。本論文では、ヒト神経幹細胞由来の三次元(3D)培養系で、アミロイドβ前駆体タンパク質およびプレセニリン1でのFAD変異が、アミロイドβ斑を含む、アミロイドβのロバストな細胞外沈着を引き起こし得ることを報告する。さらに重要なことに、FAD変異を発現する神経細胞を3D培養系で分化させると、その神経細胞体や神経突起に、界面活性剤不溶性、銀染色陽性のリン酸化タウの凝集が高レベルに見られたことに加え、免疫電子顕微鏡法で繊維状タウが検出された。β-あるいはγ-セクレターゼ阻害剤によるアミロイドβの産生抑制は、アミロイドβ病変を減少させるだけでなく、タウオパチーも軽減した。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)が、アミロイドβによって仲介されるタウリン酸化を調節することも分かった。我々は、単一のヒト神経細胞3D培養系でアミロイドβとタウの病変を再現することに成功した。神経細胞3D培養モデルでアルツハイマー病の病変を再現する我々の独特の戦略は、他の神経変性疾患のより正確なヒト神経細胞モデル開発の促進にも役立つと考えられる。

