がん:CRISPRによるマウス肝臓でのがん遺伝子の直接的変異
Nature 514, 7522 doi: 10.1038/nature13589
マウスモデルを使ったがん遺伝子研究では、従来、胚性幹細胞での遺伝子導入や遺伝子ターゲッティングにより作製された遺伝子改変系統が用いられてきた。本研究では、野生型マウスでCRISPR/Cas(clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR-associated proteins)系をin vivoで用いた新たながんモデル作製法について報告する。我々は水圧注入によりCas9を発現するCRISPRプラスミドDNAとsgRNA(single guide RNA)を、腫瘍抑制遺伝子Ptenおよびp53(別名TP53またはTrp53)を直接標的として、単独あるいは両者を組み合わせて肝臓へ送達した。CRISPRによって導入したPten変異は、肝細胞でAktのリン酸化と脂質の蓄積を引き起こし、これはCre–LoxP技術を用いたこの遺伝子の欠失による表現型と類似していた。Ptenとp53を同時にターゲッティングすると肝臓がんが生じ、これはCre–LoxPを介したPtenとp53の欠失によるがんを模擬していた。肝臓および腫瘍組織のDNA塩基配列を解読したところ、腫瘍抑制遺伝子の挿入変異や欠失変異が明らかになり、腫瘍ではPtenおよびp53両遺伝子の二対立遺伝子性変異も見られた。さらに、β-カテニン遺伝子をターゲッティングするsgRNAを持つCas9プラスミドと、活性化点変異を持つ一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのドナーを同時に注入すると、β-カテニンの核移行を伴う肝細胞の産生が起こった。本研究は、CRISPR/Cas系を用いて腫瘍抑制遺伝子とがん遺伝子に直接変異を引き起こすことが実現可能であることを明らかにしており、この結果は、肝臓がんモデルの迅速な開発と機能ゲノミクスへの新たな道を提起するものである。

