進化:脳構造から明らかになるアノマロカリス類の付属肢の体節との関連性
Nature 513, 7519 doi: 10.1038/nature13486
アノマロカリス類(放射歯目)は、カンブリア紀生物相で最もよく知られた分類群の1つだが、節足動物門を含む脱皮動物分岐群内での類縁関係については激しい議論が交わされている。アノマロカリス類の位置付けに関する現時点での選択肢は、ステム群真節足動物か、鋏角類の祖先に近いクラウン群真節足動物、もしくは、付属肢構造が節足動物と収斂的に類似した体節性脱皮動物系統である。アノマロカリス類の類縁関係がなかなか確定できないのは、その前部付属肢と体節の関係性が不確かなためである。アノマロカリス類の前部付属肢は、触角やカンブリア紀節足動物の「大付属肢」などの第二(中大脳)頭部体節の関節肢か、あるいは現生有爪動物および一部のカンブリア紀葉足動物の対をなす触角状前部付属肢と相同な構造だと見られるが定まっていない。本論文では、中国南西部のカンブリア紀前期澄江生物相から見つかった新たなアノマロカリス類Lyrarapax unguispinusについて報告する。そのほぼ完全な複数の標本には、筋肉、消化管および脳の痕跡が保存されている。脳の痕跡からは、アノマロカリス類の頭部の体節構成およびその付属肢の配置に関する最初の直接的な証拠が得られる。頭部の炭素が豊富な領域には、対をなす前部付属肢の起点に、同じく対をなす前大脳前方の神経節(pre-protocerebral ganglion)が認められ、この1対の神経節は、眼柄神経網および複眼網膜からの投射を受ける両側性の口前脳(pre-oral brain)と思われる領域に接続している。L. unguispinusの背側にある分節構造を持つ脳は、アノマロカリス類が環神経動物(Cycloneuralia)よりも節足動物と近縁であることを裏付けている。アノマロカリス類と有爪動物の脳構造に見られる一致から、眼前方の前部付属肢と接続する前大脳前方の神経節が、真節足動物と有爪動物の最終共通祖先の形質であったことが明らかになった。放射歯目の真節足動物ステム系統上への位置付けは、前部付属肢がクラウン群真節足動物では別の構造物に変化したことを意味しており、クラウン群真節足動物の遺伝子発現および神経構造は、対をなす口前の上唇が、対をなす前部付属肢の名残であることを裏付ける強力な証拠となる。

