物理:二原子分子の磁気光学トラッピング
Nature 512, 7514 doi: 10.1038/nature13634
レーザー冷却やレーザートラッピングは、現代原子物理の中核をなしている。低温原子物理学に最もよく用いられる手法は、磁気光学トラップ(MOT)であり、これはレーザー冷却と輻射圧による復元力とを組み合わせたものである。さまざまな原子種について、MOTは多数の粒子を捕獲して極低温(1 mK未満)まで冷却することができる。これは、光時計から極低温衝突の研究までさまざまな分野の進歩を可能にしたと同時に、量子縮退領域までさらに冷却するための普遍的な出発点としても役立っている。分子の磁気光学トラッピングは、極低温分子気体の研究と操作を行う上で、同様に強力な出発点となる可能性がある。分子の振動と回転に伴うさらなる自由度、特に永久電気双極子によって、極低温原子では実現できない幅広い応用が可能になる。こうした発想に促されて、極低温分子を生成するさまざまな方法が開発されてきた。あらかじめ冷却されたアルカリ原子が会合した二原子分子について、1 μK未満の温度が実証されているが、直接に冷却、捕獲できるさらに広範囲の分子種については、最近100 mK未満の温度が達成されたばかりである。分子は内部構造が複雑なので、磁気光学トラッピングが困難になる。しかし、分子MOTの実現に必要なアイデアと方法が最近開発された。今回我々は、二原子分子である一フッ化ストロンチウム(SrF)の三次元磁気光学トラッピングを、約2.5 mKという、分子の直接冷却によって達成されたこれまでで最低の温度で実証した。この方法は、原子MOTの手法を単純に拡張したものであり、非常に多くの二原子種に適用できると期待される。さらに発展させれば、精密測定から量子シミュレーション、また量子情報から極低温化学までさまざまな応用分野における、あらゆる既存の分子実験や分子実験案にこの手法が利用される可能性があると期待される。

