分子生物学:翻訳の−1フレームシフトの動的経路
Nature 512, 7514 doi: 10.1038/nature13428
翻訳のリーディングフレームの自発的変化はめったに起こらない(頻度はコドン当たり10−3~10−4程度)が、メッセンジャーRNA(mRNA)の特定の性質によって誘発されることがある。mRNAの二次構造、通常X XXY YYZというモチーフで表されるヌクレオチド7個の「ずれやすい配列(slippery sequence)」、および(一部の原核生物に見られる)16SリボソームのrRNAの3′末端と塩基対を形成するmRNA中の配列(内部シャイン・ダルガーノ配列)が存在すると、特定のプログラムに基づくリーディングフレームの変化が起こる確率が高くなる。すなわち、リボソームがヌクレオチド1個分後ろにずれて、オーバーラップするリーディングフレーム内に入り(−1フレーム)、そのまま飜訳を続けて新しいアミノ酸配列を作るのである。生化学研究、遺伝学研究が盛んに行われているが、フレームシフトの詳しい仕組みは説明できていない。今回我々は単一分子蛍光法を用いて、大腸菌(Escherichia coli)のdnaX遺伝子から生じたフレームシフト誘発性mRNAの飜訳の際に、個々のリボソームについて各コドンでの構成とコンホメーションの動的変化を追跡した。−1フレームにシフトしたリボソームは、フレームシフトせずに平常通り飜訳していくリボソームに比べ、伸長中の一時停止の時間が10倍も長いという特徴があった。この停止の間に、リボソームとmRNA促進エレメントとの相互作用によって、EF-Gが触媒する転位と正常なリボソームサブユニットの逆回転とが同期しなくなり、リボソームはサブユニット間が回転した正常でない状態で止まってしまい、アミノアシルtRNA部位(A部位)のコドンが露出したままになる。この空のA部位へtRNALysが入って結合し、EF-Gが作用すると、tRNAが−1フレームへとずれるか、リボソームがそのまま0フレームに維持されるかのどちらかになる。これらの結果から、−1フレームシフトにつながる一般的な機械論的、コンホメーション的枠組みが示され、飜訳の伸長段階に複数の速度論的分岐点があることが明らかになった。

