Letter
進化:デニソワ人様DNAの移入でもたらされたチベット人の高地適応
Nature 512, 7513 doi: 10.1038/nature13408
現生人類がアフリカを出て移動した際には、より大きな最高最低気温の差、さまざまな病原体やより高い標高といった多くの新しい環境条件に遭遇した。こうした多様な環境は、自然選択の作用因子として機能し、また、局所適応を引き起こしたと考えられる。ヒトでの最も有名な例の1つは、標高の高いチベット高原の低酸素環境に対するチベット人の適応である。低酸素経路に関わる遺伝子EPAS1が、チベット人に見られる正の選択の最も顕著なシグネチャーであることがすでに明らかになっており、高地でのヘモグロビン濃度の差異に関連することが示されている。今回我々は、40人のチベット人と40人の漢民族についてEPAS1周辺領域の配列再解読を行い、この遺伝子が非常にまれなハプロタイプ構造を持っていること、そしてこの構造は、デニソワ人あるいはデニソワ人に近縁な人類からヒトへのDNA移入があったとすることでのみ、納得のいく説明が可能であることを明らかにする。世界各地に由来するより大規模なヒト集団セットを調べたところ、この選択されたハプロタイプはデニソワ人とチベット人だけに見られたが、中国漢民族にも非常に低頻度だが存在することが分かった。さらに、このハプロタイプの長さと、他のどの集団にもこのハプロタイプが見られないという事実から見て、チベット人とデニソワ人のこのハプロタイプ共有が、DNA移入ではなく不完全な祖先系譜配分(incomplete ancestral lineage sorting)によって引き起こされた可能性は低い。今回の知見は、他のヒト族種との混合が遺伝的変動を生み出し、それが新しい環境へのヒトの適応に役立ったことを示している。

