構造生物学:ウイルスRNAによる転移RNA模倣とコンホメーション可塑性の構造基盤
Nature 511, 7509 doi: 10.1038/nature13378
RNAが機能的に最も多様な生体高分子であることはほぼ間違いない。単一のRNA配列が複数の役割を果たすこともあり、これは複雑な三次元構造によっていると考えられる。このような多機能性はまた、1つのRNAがさまざまなコンホメーション、ひいてはさまざまな機能状態をとり得ることによって達成され、増強されている可能性がある。こうした生物学的重要性にもかかわらず、RNAの構造がもたらす多機能性の枠組みについての詳細な構造的理解は不十分である。この問題に取り組むには、一本鎖のプラス鎖RNAウイルスの研究が有用であり、その典型例の1つがカブ黄斑モザイクウイルス(TYMV)の3′末端に見いだされるtRNA様構造(TLS)である。このTLSは、tRNAと似た働きをしてウイルスのゲノムRNA(gRNA)のアミノアシル化を引き起こすだけでなく、gRNAの3′非翻訳領域中の他の構造と相互作用し、マイナス鎖RNA合成のプロモーターを含んでおり、感染に必須ないくつかの過程に影響する。TLS RNAは、RNAの多機能性や可塑性の構造基盤に関する手がかりを提供すると考えられるが、その高分解能構造は数十年間にわたって不明のままである。今回我々は、完全なTYMV TLSの、2.0 Å分解能の結晶構造を示す。全体として、RNAはtRNAを模倣した形態をとっているが、この形態を作り出すために使っている一連の分子内相互作用は全く異なる。これらの相互作用は、TLSが容易にコンホメーションを切り替えることも可能にしている。加えて、TLSの構造には用途の異なる2つの面があり、1つの面はtRNAに酷似していてアミノアシル化を駆動するのに対し、もう1つの面はtRNAとは違っていて、また別の機能を果たしている。従って、TLSはこのような構造をとることで、複数の機能を果たすとともに、多様な結合相手との相互作用を可能にしており、その一例として、我々はTLSがリボソームと特異的に結合する能力を持つことを明らかにした。

