進化:ある輪状種複合体に見られるゲノムの分岐
Nature 511, 7507 doi: 10.1038/nature13285
輪状種は、1つの生物種がどのようにして2つの種へと次第に進化していくかを特に分かりやすく示す実例だが、自然界では珍しい。ムシクイ科鳥類のPhylloscopus trochiloidesの種複合体では、複数の個体群がチベットを取り巻くように輪状に分布している。中央シベリアには生殖的に隔離された2つの集団が共存し、この2つをつなぐように南側に鎖状に並んだ集団では、遺伝的特徴や表現型の特徴が段階的に異なっている。しかし、こうした種の分岐が絶え間ない遺伝子流動の中で起こったものなのか、また、輪の両端に当たる2つの集団間で過去に交雑が起きた可能性については、これまでの遺伝学的証拠では結論が出せずにいた。今回我々は、全ゲノム解析によって、現在は遺伝的変動の空間パターンが輪状種でほぼ予想されるとおりだが、過去には遺伝子流動の中断が輪の複数の位置で起こっており、またシベリアの2集団も時には交雑したことを示す。長期の地理的隔離は、ヒマラヤの北部だけでなく西部でも起きていたが、西部には現在、遺伝的に分岐した集団間で広範囲に雑種が見られる地域がある。シベリアの2集団間では直接的に、限定的な非対称の遺伝子移入が起こっているが、それによる2集団間の混合は認められないことから、新しい遺伝的背景の中では移入した遺伝子に対する選択が働いたことが示唆される。生殖隔離や遺伝子移入の程度は輪に沿った表現型分岐の程度と一致しており、南西部の接触域では表現型の類似性と広範な交雑が見られ、北部の接触域では表現型の大きな違いとほぼ完全に近い生殖隔離が見られる。これらの結果は、P. trochiloidesが地理的距離による種分化の珍しい実例だと見なす仮説には疑問を投げかけるものの、この鳥が、わずかに分岐した隣接個体群から、ほぼ完全に生殖隔離された種までを含む連続体であることを明示している。

