Letter

生化学:定量的フラックス解析により明らかになった葉酸に依存するNADPH産生

Nature 510, 7504 doi: 10.1038/nature13236

動物では、筋収縮やニューロンの発火のような機械的あるいは電気的仕事の主要なエネルギー源はATPである。化学的仕事に対してはNADPHも同じくらい重要な役割を果たしており、酸化還元防御や還元的生合成にエネルギーを供給している。グルコースからNADPHを生産する最も直接的な経路は、酸化的ペントースリン酸回路であり、リンゴ酸酵素、つまりリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(脱炭酸)も重要なことが多い。解糖と酸化的リン酸化のATP生産への相対的寄与度については詳しく分析されてきたが、NADPH代謝については同様の分析がなされていなかった。今回我々は、重水素標識した基質からNADPHへの重水素の移動が、液体クロマトグラフィー–質量分析によって直接追跡できることを示し、この方法を炭素標識法および数理モデル作成と組み合わせて、NADPHのフラックスを測定した。増殖中の細胞では、細胞質NADPHへの寄与が最大なのは、酸化的ペントースリン酸回路であった。意外にも、これとほぼ匹敵する寄与をしていたのがセリンが駆動する一炭素代謝で、メチレンテトラヒドロ葉酸から10-ホルミルテトラヒドロ葉酸への酸化に共役してNADP+からNADPHへの還元が起こる。さらに、ミトコンドリアでの一炭素代謝の追跡から、10-ホルミルテトラヒドロ葉酸の完全酸化によってNADPHが形成されることが分かった。これまで葉酸代謝がNADPH産生に関わっているとは考えられていなかったので、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(MTHFD)のノックダウンにより、その機能の重要性が確認された。細胞質あるいはミトコンドリアのMTHFDアイソザイムを枯渇させると、細胞のNADPH/NADP+比とグルタチオンの還元型/酸化型比(GSH/GSSG)が低下し、細胞の酸化ストレス感受性が上昇した。増殖中の細胞にとっての葉酸代謝の重要性は従来から認められており、これは核酸合成に使われる一炭素単位を生産する機能のためだと考えられてきたが、この経路には還元力生産という、もう1つ別の重要な機能があることが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度