神経科学:マウンティングと攻撃は視床下部腹内側部のEsr1+ニューロンによって段階的に調節されている
Nature 509, 7502 doi: 10.1038/nature13169
攻撃行動や配偶行動のような社会行動は、覚醒レベルの上昇に関連して欲求相から完了相へと、一連の相を経て進んでいく。このような段階的亢進が、脳内でどのように符号化され、行動の選択と結び付いているのかは、神経科学における未解決の問題である。齧歯類の視床下部腹内側部(VMHvl)の腹外側亜領域には、雄同士および雌雄が社会的に遭遇する際に活動が増すニューロンがある。光遺伝学的手法でこの領域を細胞型非特異的に活性化すると攻撃行動が起こるが、マウンティングは起きない。我々は、エストロゲン受容体1(Esr1)で区別されるVMHvlニューロンのサブセットを特定し、この細胞の雄の社会行動での役割を検討した。光遺伝学的操作により、Esr1+ニューロンの活性化のみで攻撃行動が開始するが、Esr1−ニューロンでは開始しないこと、そして敵対行動の持続にはEsr1+ニューロンの連続的な活動が必要なことが分かった。意外なことに、このニューロンを弱く活性化させると、雄に対しても雌に対しても攻撃ではなくマウンティング行動が引き起こされ、嗅ぎ行動や相手の詳細探査も同様に引き起こされた。光刺激の強さを増していくと、1回の社会的遭遇の間に、詳細探査およびマウンティングから攻撃行動に切り替えることができた。重要なことに、時間分解光遺伝学的抑制実験によって、Esr1+ニューロンの活動が、社会行動の欲求相(探査相)にも完了相にも必要なことが分かった。光遺伝学的活性化とカルシウム画像化法をin vitroで組み合わせて実験した場合でも、in vivoでc-Fos解析を行った場合でも、光刺激の強度増大は、活動するニューロン数の増加と、ニューロンごとの平均活動度の上昇の両方を引き起こすことが示された。これらのデータから、VMHvl中のEsr1+ニューロンは、社会的遭遇に際して欲求相から完了相への進行を制御しており、その段階的推移は、神経集団内で活動しているニューロンの数または型を反映していることが示唆された。

