生化学:Mfsd2aは血液脳関門の形成と機能に必須である
Nature 509, 7501 doi: 10.1038/nature13324
中枢神経系(CNS)は、神経の機能に適した化学的構造を備えるために、毒素や病原体の存在しない、厳密に制御された環境を必要とする。このような環境を維持するのが「血液脳関門」(BBB)で、これを構成している血管の内皮細胞では特殊化した密着結合が見られ、経細胞小胞輸送(トランスサイトーシス)の割合が極端に少ない。この脳血管内皮細胞が作る独特な生理的障壁が、周皮細胞やアストロサイトと協同してCNSへの通路を閉ざし、物質の流入・流出を制御している。最近、BBBの崩壊がさまざまな神経疾患の開始や長期にわたる持続と関連付けられるようになったが、完全な機能を持つBBBはCNSへの薬剤送達の大きな障害にもなっている。BBBの形成を制御する分子機構が十分に解明されていないために、病気や治療の際にBBBを操作することはできなかった。今回我々は、機能を備えたBBBの確立を支配する機構を明らかにした。まず、胚にトレーサーを注入する新しい手法を用いて、BBB機能の発生の時空間的プロファイルを調べ、マウスのBBBは15.5日齢胚(E15.5)で機能するようになることを明らかにした。次に、BBB形成の際に発現されるBBB特異的遺伝子のスクリーニングを行い、Mfsd2a(major facilitator super family domain containing 2a)がCNSのBBBを持つ血管で選択的に発現されていることを見いだした。Mfsd2aを遺伝的に除去すると、胚の段階から成体までの期間を通してBBBが透過性になるが、血管ネットワークのパターンは正常に保たれる。電子顕微鏡観察では、Mfsd2a−/−マウスではCNS内皮細胞で小胞によるトランスサイトーシスが急増しているが、密着結合には明らかな欠陥は認められないことが明らかになった。さらに、内皮でのMfsd2a発現が周皮細胞によって調節され、BBBの完全性維持を助けていることも分かった。これらの知見は、Mfsd2aがBBB機能の重要な制御因子であり、CNS内皮細胞でのトランスサイトーシスを抑制することで作用している可能性を示している。また今回得られた知見は、CNSへの薬剤送達のための新しい治療法の開発にも役立つだろう。

