合成生物学:拡張した遺伝アルファベットを用いる半合成生物
Nature 509, 7500 doi: 10.1038/nature13314
生物はゲノム中にコードされた情報によって規定されており、生命の誕生以来、この情報は2つの塩基対からなる遺伝アルファベット(A–TおよびG–C)を用いてコードされている。in vitroではこのアルファベットが拡張され、複数の非天然型塩基対(UBP)が使われている。我々は以前に、疎水性の核酸塩基を持つヌクレオチド間に形成されるUBP群を開発し、これらのうちd5SICSとdNaMの対(d5SICS–dNaM)を例として実証を行った。この塩基対はPCRによる増幅とin vitroでの転写を効率よく受け、その独特な複製機構も解明されている。しかしながら、生物の遺伝アルファベットの拡張では、新しく前例のない難問が生じた。すなわち、非天然型ヌクレオシド三リン酸が細胞内で入手できなければならないこと、内在性のポリメラーゼが複雑な細胞環境内で非天然型三リン酸を用いてUBPを含むDNAを忠実に複製できなければならないこと、そして、DNAの完全性を保つ経路の存在下でUBPが安定でなければならないことである。今回我々は、外因的に発現させた藻類のヌクレオチド三リン酸輸送体がd5SICSとdNaMの三リン酸 (d5SICSTPとdNaMTP)を効率よく大腸菌(Escherichia coli)内に取り込むこと、そして、内在性の複製装置がこれらの三リン酸をを用いて、d5SICS–dNaMを含むプラスミドを正確に複製することを示す。非天然型三リン酸の存在も、UBPの複製も、増殖に顕著な負荷をもたらすことはない。また、UBPはDNA修復経路により効率よく除去されることはないことが分かった。従って、今回得られた細菌は拡張された遺伝アルファベットを安定に伝播する最初の生物であるといえる。

