神経科学:知覚刺激は視覚皮質を同期状態から非同期状態に移行させる
Nature 509, 7499 doi: 10.1038/nature13159
哺乳類の大脳皮質では、自発的活動および知覚刺激の際の神経応答には大きな変動がある。この変動の説明として、覚醒動物の皮質は非同期的な高コンダクタンス状態にあり、そこでは個々のニューロンに互いに相関性のない多数の興奮性および抑制性の入力が収斂することでスパイクが不規則に発生するという説が提案されてきた。この状態の特徴は、ニューロンの膜電位(Vm)がスパイク発生閾値の直下辺りにあること、およびこのシナプス入力の集合がほぼ正規分布しており、多くの相関のない入力から起こっていることである。だが、不規則なスパイク発火は、Vmの大きなゆらぎを引き起こす、頻度の低い相関する入力からも生じることがある。これらの仮説を区別するため、行動中のサルの皮質からVmのホールセル記録をとる技術を開発し、注視課題を実行中のサル一次視覚皮質(V1)に注目した。非同期状態にあるという予想に反して、注視実行時の平均Vmは閾値よりはるかに低く(14 mV)、スパイク発火は、時折自然発生する大きなゆらぎによって誘発されることが分かった。Vm値の分布は、正規分布する入力から予想される範囲より上に偏っているが、頻度の低い相関した事象により生じるシナプス入力と一致していた。また、Vmの自発的ゆらぎは周囲のネットワーク活動と相関しており、これは近傍から同時記録した局所電場電位に反映されていた。しかし、視覚刺激があると反応は非同期状態におけるものに近くなる。つまり平均Vmは閾値に近づき、ゆらぎはより正規分布に近づき、個々のニューロンと周辺ネットワークの間の相関は崩れた。こうした結果から、知覚刺激は、共通皮質回路を同期状態から非同期状態に移行させ得ることが分かった。

