構造生物学:胆汁酸輸送体における交互アクセス機構の構造基盤
Nature 505, 7484 doi: 10.1038/nature12811
胆汁酸は肝細胞でコレステロールから合成され、胆管を通って小腸に分泌され、そこで脂質と脂溶性ビタミンの吸収を助ける。分泌された胆汁酸の90%以上は、腸肝循環として知られる過程を介して腸から回収され、再分泌のために肝臓へ戻る。ヒトでは、2種のNa+依存性胆汁酸輸送体が腸肝循環に関与する。1つは肝細胞に発現するNa+-タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP;別名SLC10A1)であり、もう1つは回腸末端の腸細胞に発現する頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体(ASBT;別名SLC10A2)である。ASBTを阻害すると胆汁酸の再吸収が減少し、それにより胆汁酸の生合成、ひいてはコレステロールの消費が増加することから、近年、ASBTは高コレステロール血症治療薬の標的候補として関心を集めている。しかし、胆汁酸輸送体の三次元構造が解明されていないことで、基質選択性や基質輸送に関する分子機構の理解、および豊富に存在する機能的データの解釈は進んでいない。最近、髄膜炎菌Neisseria meningitidisのASBTホモログ(ASBTNM)の界面活性剤中の結晶構造が報告され、2つのNa+と1つのタウロコール酸が結合した、内向きに開口したコンホメーションをとっている状態が明らかになった。しかし、細胞膜を通って胆汁酸とNa+を輸送する構造変化を、1つの構造から推測するのは困難である。今回我々は、Na+と胆汁酸の共役輸送に伴う構造変化を解明するために、エルシニア属細菌であるYersinia frederikseniiのASBTホモログ(ASBTYf)の脂質環境内での2つの構造を解いた。基質結合ドメインの大きく堅固な骨格の回転によって、保存された「クロスオーバー」領域ができる。ここでは2つの不連続なヘリックスが交差していて、細胞膜のどちら側からも交互にアクセスすることができる。この結果は、輸送中の胆汁酸の位置と配向、およびNa+輸送経路に関わってくる。

