量子エレクトロニクス:グラフェン量子スピンホール状態における可変な対称性の破れとヘリカルエッジ輸送
Nature 505, 7484 doi: 10.1038/nature12800
従来、低次元電子系は、ヘテロ構造中か、閉じ込めがそのサイズによって本質的である単一分子、ナノワイヤー、グラフェンなどのナノスケールの物質中のいずれかに、電子を静電的に閉じ込めることによって伝統的に得られてきた。最近、新しい方法として、絶縁体や超伝導体などの準粒子励起に伴うエネルギーギャップがある系で生じる対称性に保護されたトポロジカル(SPT)相において、関係する大局的対称性を破らないかぎりギャップのない安定な表面状態を保ち得ることが認識されている。SPT表面状態の電荷キャリアの性質は、バルクの対称性と密接に関わっており、これから新しい特性を持った一次元電子系と二次元電子系が生じる。例えば、時間反転対称性は、ヘリシティを持つ三次元トポロジカル絶縁体の表面に質量がゼロの電荷キャリアを生じ、それらのスピンの方位はその運動量に対して固定される。この対称性を弱く乱すと、表面にギャップが発生し、その結果、有限の有効質量とエキゾチックなスピン構造を持った電荷キャリアが生じる。類似の操作は、二次元のトポロジカル絶縁体ではまだ実証されていない。この系におけるSPT相の主な例は、量子スピンホール状態である。今回我々は、グラフェン面に対して角度をつけて超高磁場をかけたとき、電荷中性な単層グラフェンが量子スピンホール状態を持つことを実験により実証した。時間反転対称な系とは対照的に、半充填したランダウ準位の電子スピンが高磁場によって偏極しているため現れる平面スピン回転対称性によって、この状態は保護されている。その結果生じるヘリカルエッジ状態の特性は、スピン回転対称性を自発的に破る傾向がある固有の反強磁性不安定性に対抗するようかけた磁場とバランスをとることにより変調できる。その結果生じる傾角反強磁性状態において、可変なバンドギャップとそれに伴うスピン構造という新しい種類の一次元電子系からなる、ギャップを持つエッジ状態に特徴的な輸送現象を観察した。

