生化学:リピドAを産生する触媒サイクルの間のアシルキャリヤータンパク質の挙動を追跡する
Nature 505, 7483 doi: 10.1038/nature12679
アシルキャリヤータンパク質は、生命のドメイン全てにわたって最もよく保存されているタンパク質の1つであり、炭化水素鎖のin vivo輸送を行う手段となっている。特に、II型アシルキャリヤータンパク質はさまざまな生合成経路の酵素と一時的に相互作用することによって、細胞の一次代謝系における相互作用の中枢として重要な役割を果たしている。しかし、このような相互作用は極めて一時的なものであり、しかもアシルキャリヤータンパク質のコンホメーションには本質的に可動性があることが障害となって、触媒サイクル全体とアシルキャリヤータンパク質の構造とを結びつけて可視化しようという試みは、これまでうまく行っていなかった。このような可視化は、細胞にとって有用なだけでなく、疾患治療にも使えるさまざまな化合物を産生する細胞代謝系の基本的性質を解明するのに不可欠である。例えばアシルキャリヤータンパク質は、リポ多糖の成分でグラム陰性菌の増殖や生存に必要とされるリピドA(内毒素)の生合成に重要な役割を果たすが、リピドA成分は宿主哺乳類の免疫系活性化因子であって重要な治療標的であることが明らかになっている。リピドA生合成(Raetz経路)では、アシルキャリヤータンパク質が補欠因子である4′-ホスホパンテテインに結合したアシル中間体を、LpxDなどの4種のアシルトランスフェラーゼの間で往復輸送する。今回我々は、LpxDに結合した大腸菌(Escherichia coli)アシルキャリヤータンパク質について、静止した基質状態および反応座標に沿って放出されていく2種類の産物という3つの状態の結晶構造を解明した。これらの構造から、界面での複雑な相互作用によって、アシルキャリヤータンパク質がアシル基の運搬に適した位置に配置されることが明らかになった。これにはパンテテニル基が直接関わっている。動かないアシルキャリヤータンパク質のコンホメーションの相異から、会合–解離過程の分子基盤が明らかになった。LpxDの触媒部位内にある4′-ホスホパンテテインに予想外のコンホメーションのずれが見られ、アシルキャリヤータンパク質が産物の放出にこれまで例のない役割を果たしていることが分かった。

