集団遺伝学:後期旧石器時代のシベリア人ゲノムから、アメリカ先住民の祖先は2系統であることが判明
Nature 505, 7481 doi: 10.1038/nature12736
最も初期のアメリカ先住民であるファースト・アメリカンの起源については、いまだに議論が続いている。アメリカ先住民は遺伝学的には東アジア人と最も近い関係にあるようだが、旧世界のどの特定集団に最も近いかについては意見の一致が得られていない。今回我々は、シベリア中南部のマリタで発掘された約2万4000年前の個体(MA-1)のゲノムを解析し、平均読み取り深度1×の概要配列を得た。これは、塩基配列がこれまでに報告された解剖学的な現生人類のゲノムの中で、我々の知る限りで最古のものである。MA-1のミトコンドリアゲノムはハプログループUに属するが、このハプログループは、後期旧石器時代および中石器時代のヨーロッパの狩猟採集民でも高頻度で見つかっている。またMA-1のY染色体は、現代の西ユーラシア人の基部系統に位置し、大半のアメリカ先住民族系統の根元部分に近いことも分かった。常染色体からも同様に、MA-1が現代の西ユーラシア人の基部系統に位置し、遺伝学的に現代のアメリカ先住民族に近いが、東アジア人との類似性は高くないという証拠が得られた。このことは、現代の西ユーラシア人に近縁な集団が、2万4000年前には、これまで一般に考えられていたより北東の地域にまで分布していたことを意味している。さらに、アメリカ先住民の祖先の14~38%は、古代のこの人類集団からの遺伝子流動を経て生じた可能性があると推定される。この遺伝子流動が起こった時期は、アメリカ先住民の祖先が東アジア人の祖先から分岐した後だが、新世界でアメリカ先住民集団が多様化するよりも前であった可能性が高い。ファースト・アメリカンの一部の頭蓋骨には東アジア人とは異なる形態的特徴があることが報告されているが、その理由も、このMA-1の系統からアメリカ先住民の祖先への遺伝子流動によって説明できるかもしれない。これとは別に、やはりシベリア中南部で見つかった約1万7000年前の標本、アフォントヴァ・ゴラ-2の塩基配列解読でも、MA-1と同様な常染色体遺伝子シグネチャーが明らかになり、最終氷期最盛期を通してずっと、この地域に継続的にヒトが住んでいたことが示された。これらの知見により、現代のアメリカ先住民族に見られる西ユーラシア人の遺伝的シグネチャーは、コロンブス到来以降に起こった混合だけでなく、ファースト・アメリカンの祖先の段階で混合があったことにも由来することが明らかになった。

