細胞生物学:血管性ニッチからの分岐したアンジオクラインシグナルが肝臓の再生と繊維形成のバランスをとる
Nature 505, 7481 doi: 10.1038/nature12681
化学物質あるいは外傷による肝損傷は、肝臓の再生を無効にする異常な回復(繊維形成)につながることが多い。肝臓のニッチ細胞が、肝臓修復の際に再生と繊維形成を別個に調節する機構は、まだ明らかになっていない。主に肝臓の類洞内皮細胞に代表される肝臓血管性ニッチは、アンジオクライン因子群として知られるパラクリン性栄養因子(trophogen)を出して、再生を促す。しかし、肝臓類洞内皮細胞からの再生促進性のアンジオクラインシグナルが、どのように転換して繊維形成を促進するのか分かっていない。本研究では、マウスでの誘導性の内皮細胞特異的遺伝子除去技術と、急性および慢性肝損傷の相補的なモデルを組み合わせ、肝臓類洞内皮細胞からの相異なるアンジオクラインシグナルが、急性損傷後には再生を促進し、慢性的な損傷後には繊維形成を引き起こすことを示す。血管性ニッチの繊維形成促進へ移行は、肝臓類洞内皮細胞におけるSDF-1(stromal-derived factor-1)受容体、CXCR7、CXCR4の差別的発現に起因する。急性損傷後には、肝臓類洞内皮細胞におけるCXCR7が上方制御されて、CXCR4とともに作用して転写因子Id1を誘導し、再生促進性のアンジオクライン因子を分泌し、再生を引き起こす。成体マウスの肝臓から得た類洞内皮細胞でCxcr7の欠失を誘導すると(Cxcr7iΔEC/iΔEC)、Id1を介したアンジオクライン因子の産生が減少し、肝臓の再生が低下した。対照的に、肝毒素(四塩化炭素)の反復注射と胆管結紮により誘導した慢性損傷後には、肝臓類洞内皮細胞における構成的なFGFR1(fibroblast growth factor receptor 1)シグナル伝達が、CXCR7依存的な再生促進性応答に拮抗し、CXCR4の発現を増加させた。こうしてCXCR7の発現にCXCR4が勝ることにより、肝臓類洞内皮細胞のアンジオクライン応答が変わり、デスミン+肝星細胞様細胞の増殖を促し、繊維形成促進性の血管性ニッチを強化する。マウスでFgfr1あるいはCxcr4を内皮細胞特異的に除去(Fgfr1iΔEC/iΔECおよびCxcr4iΔEC/iΔEC)すると、再生促進性経路が回復し、FGFR1を介したアンジオクライン因子の不適応性転換が抑制された。同様に、肝臓類洞内皮細胞での選択的なCXCR7活性化は、繊維形成を阻害した。従って、肝臓損傷への応答においては、血管性ニッチでの再生促進性のCXCR7–Id1のアンジオクライン経路と、繊維形成促進性のFGFR1–CXCR4のアンジオクライン経路の差別的な動員が、再生と繊維化のバランスをとっていることが実証された。以上の結果は、繊維形成を引き起こさない肝再生を達成するための治療的指針になる。

