Letter

構造生物学:ナトリウム/プロトン対向輸送の2ドメインエレベーター機構

Nature 501, 7468 doi: 10.1038/nature12484

ナトリウム/プロトン(Na+/H+)対向輸送体は、全ての細胞の細胞膜にあり、細胞の恒常性維持にとって不可欠である。ヒトでは、その機能不全は高血圧、心不全、てんかんなどの疾患につながり、薬物標的として確立されている。Na+/H+対向輸送のモデル系として最も解明が進んでいるのは大腸菌(Escherichia coli)のNhaA で、電子顕微鏡像も結晶構造も得られている。NhaAは、コアドメインと二量体化ドメインの2つのドメインから構成されている。NhaAの結晶構造では、2つのドメイン間に空洞が存在し、これによりNhaAの内側の表面からイオン結合部位にアクセスすることが可能となっている。多くのNa+/H+対向輸送体と同様、NhaAの活性はpHにより調節され、pH 6.5以上においてのみ活性が現れるため、このpHでコンホメーション変化が起こると考えられている。これまでに報告されているNhaAの結晶構造は、低pHにおける不活性化型だけであった。今回我々は、Na+/H+対向輸送体の1つ、高度好熱菌Thermus thermophilusのNapAの活性状態の構造を、pH 7.8で成長させた結晶を用いて分解能3Åで解析し、報告する。NapAの構造では、コアドメインと二量体化ドメインはNhaAで見られたのとは異なる位置関係にあり、負に荷電した空洞が外側に向けて開いている。細胞の外側に開いたこの空洞によって、Na+/H+対向輸送体で高度に保存されたアスパラギン酸残基への直接的なアクセスが可能となる。このアスパラギン酸残基はイオン結合を調節すると考えられており、今回、分子動力学シミュレーションによりその役割が確かめられた。しかし、このイオン結合部位へのアクセスを切り替えるためには、コアドメインが二量体化界面に対して約20°と非常に大きく回転する必要がある。Na+/H+対向輸送体は1秒間に最大で1,500イオンという速い輸送速度を持つにもかかわらず、two-domain rocking bundle モデルにより作動しており、これは二次性能動輸送体一般に関わる特徴を明らかにしていると我々は考える。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度