物理:格子に閉じ込められた極性分子を用いた双極子スピン交換相互作用の観測
Nature 501, 7468 doi: 10.1038/nature12483
量子領域における極性分子の生成を利用すれば、長距離双極子相互作用によって、強く相互作用する多体量子系の理解が深まり、量子磁性を研究するための格子スピンモデルが実現されると予想される。接触相互作用に波動関数の重なりが必要となる通常の原子系では、格子上での有効スピン相互作用が、超交換と呼ばれるプロセスを通してトンネリングによって媒介される。しかし、その結合は比較的弱く、最近接相互作用に限られる。これに対して、双極子相互作用は、トンネリングがなくても存在し、最近接格子を越えて広がる。これによって、比較的エントロピーが高く格子充填率が低い気体の場合でも、コヒーレントなスピンダイナミクスが存続可能となる。これまで、極低温分子気体において測定された双極子相互作用効果は、非弾性衝突と化学反応の修正に限られていた。今回我々は、三次元光格子にピン止めされた極性分子の双極子相互作用を利用して、格子スピンモデルを実現している。スピンは、マイクロ波で生成され調べられる分子回転状態に符号化される。2分子間での回転角運動量の共鳴交換によって、スピン交換相互作用が実現される。双極子相互作用は、コヒーレンスの全体的減衰に加えて振動を示すスピンコヒーレンス発展に現れている。これらの振動の周波数、スピンコヒーレンス時間の強い格子充填率依存性、二体交換相互作用に起因してダイナミクスを反転するよう意図された多重パルス列の効果は全て、双極子相互作用の証拠となる。さらに、我々は、連続量子ゼノ機構に起因する弱い格子における損失の抑制を実証している。これらのトンネル誘起損失の測定により、格子充填率を独立して決定できる。今回の研究は、直接長距離スピン相互作用する多体スピンモデルの挙動を初めて調べたものであり、スピン格子の多体ダイナミクスを将来研究するための基礎を築くものである。

