がん:細胞老化において代謝を合成致死的に標的とするがん治療
Nature 501, 7467 doi: 10.1038/nature12437
活性化されたがん遺伝子と抗がん化学療法は、細胞の老化を引き起こす。細胞の老化とは生細胞の最終的な増殖停止で、S期への進入を阻害するヒストン3リシン9トリメチル化(H3K9me3)が特徴である。治療が誘発する老化(TIS)は長期転帰を改善するが、老化した腫瘍細胞が害を及ぼす可能性があるため、これを量的に除去することが治療の優先事項となる。今回我々は、TISがH3K9ヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1に依存して起こるEμ-mycトランスジェニックマウスリンパ腫モデルを使い、in vitroおよびin vivoで、老化に関連した代謝の再プログラム化の機構と治療への利用について示す。老化を誘発する化学療法の後、TISを起こし得るリンパ腫ではグルコース利用が増加し、ATP産生が大幅に増えるが、TISを起こせないSuv39h1−リンパ腫ではこのような変化は見られない。我々は、この変化が強いタンパク質毒性ストレスによるものであることを明らかにする。このタンパク質毒性ストレスは、以前に報告されているSASP(老化に関連した分泌表現型)の結果である。SASPが生じるTIS細胞では小胞体ストレス、異常タンパク質応答(UPR)、ユビキチン化亢進が見られ、それによって、急激にエネルギーを消費する形で有害タンパク質がオートファジーの標的となった。従ってTISリンパ腫は、強力なSASP応答を欠く老化モデルとは違って、グルコース利用およびオートファジーの阻害に対する感受性が高く、そのためカスパーゼ-12とカスパーゼ-3を介した小胞体関連アポトーシスによって選択的に除去された。これらを踏まえ、in vivoでのTIS誘発に際してこれらの代謝上の要求を薬剤標的としたところ、腫瘍の退縮が促進され、治療転帰がさらに向上した。これらの知見から、TISでは異化が亢進していることが分かり、代謝を合成致死的に標的とすることで、治療に利用できることが明らかになった。

