細胞:iPS細胞由来臓器原基の移植により血管網を持つ機能的なヒト肝臓を誘導
Nature 499, 7459 doi: 10.1038/nature12271
末期臓器不全症を治療するためのドナー臓器は非常に不足しており、ヒトの誘導多能性幹細胞(iPS細胞)から代替臓器を作製する試みに期待が集まっている。これまでに機能細胞の分化誘導を試みた結果は多数報告されているが、肝臓などのように血管網を持つ立体臓器の作製に成功したという報告はない。本論文では、ヒトiPS細胞からin vitroで作り出した肝芽(iPSC-LB)の移植により、血管網を持つ機能的なヒト肝臓が作製可能であることを示す。細胞運命が指定された肝臓細胞(肝臓細胞の運命をたどるように運命決定された未成熟内胚葉細胞)は、血管内皮細胞および間葉系細胞間の相互作用を再現することにより、自己組織化して立体構造を持つiPSC-LBになった。免疫染色および遺伝子発現解析の結果から、in vitroで創出したiPSC-LBは、in vivoで形成される肝芽と類似していることが明らかになった。iPSC-LB移植片内のヒトの血管網は、48時間以内にレシピエントの血管に吻合することにより、機能するようになった。機能的な血管網の形成が刺激となり、iPSC-LBは成体の肝臓に類似した組織へと成熟した。代謝活性の高いiPS細胞由来の組織は、レシピエントの肝臓を置換せずとも、タンパク質の産生やヒト特異的な薬物代謝など肝臓に特徴的な機能を示した。さらに、iPSC-LBを腸間膜に移植することにより、薬剤誘発性の致死性肝不全モデルが救済された。これは、我々の知る限り、多能性幹細胞から機能的なヒト臓器作製が可能であることを実証した最初の報告である。本技術を臨床応用するためには今後さまざまな検証が必要であるが、今回の臓器原基の移植という概念の実証は、移植治療研究への新たな有望な道を提供する。

