構造生物学:真核生物カルシウム/プロトン交換輸送体で見られる交互アクセスの構造的基盤
Nature 499, 7456 doi: 10.1038/nature12233
真核生物のCa2+調節にはCa2+の細胞内小器官への隔離が関わっていて、細胞質への迅速なCa2+放出は重要なシグナル伝達経路の特徴である。このようなシグナル伝達事象後のCa2+の大量除去は、Ca2+:カチオン(CaCA)スーパーファミリーに属する輸送体によって行われる。CaCAスーパーファミリーには、Na+/Ca2+(NCX)対向輸送体およびCa2+/H+(CAX)対向輸送体が含まれる。哺乳類ではNCXとそれに近縁のタンパク質がSLC8とSLC24ファミリーを形成し、筋細胞のCa2+静止電位の回復、ニューロンでのシグナル伝達や腎臓でのCa2+再吸収を行っている。CAXファミリーのメンバーは、植物や真菌で、環境変化あるいは高浸透圧ショック、ホルモン応答、接合フェロモン応答などの事象により引き起こされるシグナル伝達後に起こる細胞内Ca2+の急激な上昇中に、細胞質Ca2+の恒常性を維持する役割を持つ。CaCAスーパーファミリーに属する輸送体の細胞質に面したコンホメーションは解明されておらず、その輸送機構は推測にすぎない。今回我々は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae液胞のCa2+/H+交換輸送体(Vcx1)について、細胞質側を向いて基質が結合したコンホメーションをとった状態の結晶構造を2.3 Åの分解能で決定した。Vcx1は、我々が知る限りで、CAXファミリーで構造が決定された最初の輸送体であり、CaCAスーパーファミリー輸送体の細胞質側に向いた重要なコンホメーションが明らかにされた。これはCaCAスーパーファミリーが細胞膜を通過する高速のCa2+輸送を行う際の新規な交互アクセス機構の構造的基盤を示している。

