生物物理:タンパク質の本質的な無秩序性によるアロステリック性の調節
Nature 498, 7454 doi: 10.1038/nature12294
アロステリック性は多くの球状タンパク質や酵素に本質的に備わる性質で、細胞の調節とフィードバック機構に不可欠である。最近の理論研究や実験観察から、プロテオームのかなりの部分を占める本質的に無秩序なタンパク質でもアロステリック性が明らかに存在することが示唆されている。本質的に無秩序なタンパク質の多くはさまざまな相手と無差別的に結合して相互作用し、タンパク質相互作用ネットワークにおける分子ハブとして機能することが多い。アデノウイルスのがんタンパク質E1A(early region 1A)は、本質的に無秩序な分子ハブタンパク質の典型例の1つである。E1Aは、アデノウイルスの感染から数時間以内に、宿主細胞のエピジェネティックな再プログラム化を引き起こす。それには、基本転写コアクチベーターであるCREB結合タンパク質(CBP)、そのパラログであるp300、網膜芽細胞腫タンパク質(pRb;RB1とも呼ばれる)などの宿主の重要な調節因子をはじめ、多種類の相手との結合が関与している。しかし、E1A–CBP–pRbの相互作用において、あるいはもっと一般的に、無秩序なハブタンパク質の相互作用ネットワークにおいて、どのようなアロステリック効果が作用しているのかはほとんど解明されていない。今回我々は単一分子蛍光共鳴エネルギー移動(smFRET)法を用いて、三成分E1A系における共役した結合と折りたたみの過程を調べた。E1Aは凝集しやすい性質を持つ上に他の二成分との結合親和性が高いことで今回のような研究が困難だったのだが、smFRETという高感度実験で用いられる低い濃度がこうした場合に有効に働くとわかった。得られたデータから、E1A–CBP–pRbの相互作用には正または負の協同性があり、どちらになるかはどのE1A相互作用部位が利用できるかによって決まることが明らかになった。この予想外の協同性切り替えは、E1A複合体が熱力学的に三成分と二成分のどちらに向かうかを微調節することを可能にしており、関連する下流のシグナル伝達出力の状況に応じた調節も可能なのかもしれない。このようなアロステリック相互作用の調節は、本質的に無秩序なタンパク質の分子ハブ機能に広く見られる機構である可能性が高い。

