医学:媒介動物による伝播はプラスモジウム類の持つ毒力の免疫による制御を調節する
Nature 498, 7453 doi: 10.1038/nature12231
プラスモジウム類(Plasmodium)の毒力(病気を引き起こす力)を調節する機構の解明は、ヒトマラリアの発症機序の解明に重要である。齧歯類、霊長類あるいはヒトの血液内でプラスモジウム類を連続継代させると寄生虫の毒力が増大する。このことから媒介動物による伝播が哺乳類宿主内でのプラスモジウムの毒力を調節することが考えられる。こうした考えと一致して、疾患の重症度は媒介動物を介した伝播により変化することがあり、これはプラスモジウム類が「リセット」されて本来の性質を持つようになるためと考えられている。しかし、媒介動物による伝播がプラスモジウム類の毒力を調節することを示す直接の証拠はこれまでに得られていない。本論文では、血液内で連続継代させた(serially blood passaged;SBP)ネズミマラリア原虫(Plasmodium chabaudi chabaudi)の蚊による伝播を用いて、このような寄生性原虫の毒力の調節について調べた。蚊による伝播の前後に行ったSBPネズミマラリア原虫の解析から、媒介動物による伝播がまず無性血液段階の寄生虫を変化させ、それによって寄生虫が誘発する哺乳類免疫応答が修飾され、さらに寄生虫の増殖や寄生虫に関連する病状が減弱されることが明らかになった。寄生虫毒力の低下は、pir多遺伝子ファミリーの発現修飾に関連している。したがって、媒介動物によるプラスモジウム類の伝播は、赤血球内サイクルで変異抗原を産生しそうな遺伝子の発現を調節しており、また誘発される哺乳類免疫応答も修飾するため、結果として寄生虫の毒力が調節されることになる。これらの結果は、マラリアに対する有効なワクチン開発のために行われている対マラリア防御免疫機構の解明努力の中心となる問題が、蚊であることを示している。

