物理:原子スケール接合における熱散逸
Nature 498, 7453 doi: 10.1038/nature12183
原子接合や単一分子接合は、電気回路の小型化の究極的限界である。こうした接合は、ナノメートルスケールの新しい機能デバイスにおける電荷移動やエネルギー移動の説明に必要な量子輸送理論を検証する理想的なプラットフォームでもある。最近の研究では、原子スケール接合における電気的現象や熱電的現象を調べることに成功している。しかし、原子スケールデバイスでの熱散逸や熱輸送の評価は、実験が困難なため、依然としてほとんど行われていない。今回我々は、ナノスケールの熱電対を組み込んだ特別製の走査プローブを用いて、単一分子接合(「分子接合」)の電極における熱散逸を調べている。我々は、接合の伝達特性がエネルギーに強く依存する場合、熱散逸が非対称、つまり電極間で等しくならないことと、熱散逸がバイアス極性と多数電荷キャリアの正体(電子か正孔か)の両方に依存することを見いだしている。これに対して、わずか数個の金原子で構成される接合(「原子接合」)は、伝達特性のエネルギー依存性が弱く、感知できる非対称性を示さない。今回の結果は、原子スケール接合の電子伝達特性と熱散逸特性をはっきりと関係付けるとともに、輸送が弾性的、すなわち接触部でエネルギー交換が起こらないさまざまなメゾスコピック系における熱散逸を理解する枠組みを確立するものである。我々は、今回確立した手法によって、原子スケールのペルティエ効果が研究できるようになると予想している。こうした効果を研究する分野では、興味深い理論予測がなされたにもかかわらず、実験的な探究がほとんど行われていないのである。さらに、今回報告した実験的進歩によって、原子接合や分子接合における熱輸送の研究も可能になると予想される。これは、まだ達成されていない重要かつ困難な科学技術目標である。

