生化学:tRNA機能を調節する代謝産物カルボキシ-SAMの、構造を手がかりにした発見
Nature 498, 7452 doi: 10.1038/nature12180
新規代謝産物を見つけ出し、その生物学的機能を解明することは、生物学における重要な問題である。X線結晶解析では、精製や結晶化の過程を経ても壊れない、予想外のリガンドが見つかる可能性がある。このようなタンパク質–リガンド複合体が偶発的に得られれば、新規な活性や経路、調節機構を知る手がかりとなる。本論文では、これまで知られていなかった代謝産物であるカルボキシ-S-アデノシル-L-メチオニン(Cx-SAM)とその生合成経路、およびCx-SAMが転移RNA修飾に果たす役割について述べる。SAM依存性メチルトランスフェラーゼスーパーファミリーに属する酵素CmoAの構造から、触媒部位にCx-SAMと一致するリガンドが存在することが明らかになった。CmoAによるSAMからCx-SAMへの変換の機構の解析から、プレフェナートがカルボキシ供与体となるという、これまで例のない役割を果たし、独特なイリド中間体がカルボキシ受容体として関わっていることが明らかになった。SAM依存性メチルトランスフェラーゼスーパーファミリーの第二のメンバーである酵素CmoBは、Cx-SAMを認識してカルボキシメチルトランスフェラーゼとして働き、グラム陰性菌の複数のtRNAにおいて、ゆらぎの位置にある5-ヒドロキシウリジンを5-オキシアセチルウリジンに変換し、その結果、tRNAのコドン認識能力が拡張される。CmoAとCmoBはそれぞれ、Cx-SAMについて初めて報告されたシンターゼとトランスフェラーゼである。これらの知見は、SAM依存性メチルトランスフェラーゼスーパーファミリーの機能のこれまで知られていなかった多様性を明らかにしており、SAMを使う生化学反応が代謝や生物機能に幅広く関わっていることを明らかにしている。これらの発見は、構造ゲノミクスの手法が、生理学的に重要な巨大分子の結合相手となるリガンドを同定し、その機能を明らかにする方法に有用であることを明確に示している。

