がん:がん遺伝子誘導性老化におけるミトコンドリアのゲートキーパー、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの主要な役割
Nature 498, 7452 doi: 10.1038/nature12154
がん遺伝子の予定外の活性化のような頑強なストレスシグナルへの応答として、細胞はがん抑制ネットワークを動員して、悪性転換の危険を回避できる。多くの証拠が、がん遺伝子誘導性老化(OIS)がそのような遮断装置として働いて、ほぼ不可逆的に細胞を増殖プールから撤退させることを示しており、がんに対抗するための極めて重要な病態生理学的機構となっている。OISは動物モデルやヒトで腫瘍形成性増殖の中断に広く関与しているにもかかわらず、その機構や主要因子の解明は始まったばかりである。代謝調節の異常は細胞の増殖能と密接に関連し、老化細胞であってもまだ代謝活性があると考えられているが、OISにおける細胞代謝の役割についての詳細はあまり研究されていない。本研究では、代謝プロファイリングと機能の摂動により、ミトコンドリアのゲートキーパーであるピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)が、黒色腫などの悪性腫瘍で頻繁に変異が見られるがん遺伝子BRAFV600Eにより引き起こされた老化で主要な仲介因子となっていることを示す。BRAFV600Eによる老化に伴って、PDH抑制酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK1)の抑制およびPDH活性化酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼ(PDP2)の誘導が同時に起きる。その結果として起こるPDHの複合的な活性化は、トリカルボン酸回路でのピルビン酸の使用を増強し、呼吸と酸化還元ストレスを増加させた。発がん性形質転換への律速段階であるOISの消失は、これらの作用の逆転と同時に起こる。さらにOISにおけるPDHの決定的な役割の裏付けとして、PDK1やPDP2の発現レベルを強制的に正常化すると、PDHが抑制されてOISが消失し、その結果、BRAFV600Eによる黒色腫形成が可能になる。最後に、PDK1を欠失させると、BRAFを標的とした抑制に耐性のあるメラノーマの部分集団が根絶され、確立した黒色腫が退縮した。以上の結果は、OISと主要な代謝シグナル伝達軸の間の機構的な関連性を明らかにしており、治療に使える可能性がある。

