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微生物学:緑膿菌が形成するバイオフィルムでは、Pslからなる菌跡が探索と微小コロニー形成を誘導する

Nature 497, 7449 doi: 10.1038/nature12155

細菌性バイオフィルムは、多数の細胞からなる複雑な形態の、物体表面に付着している微生物集合体である。日和見病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などのバイオフィルム形成細菌は、自由遊泳性でプランクトン型の細菌とは表現型が異なっている。表面への接着に影響する因子に注目して多くの研究が行われ、緑膿菌はPslという細胞外多糖を分泌し、これが「分子のり」として機能して表面への接着を促進することが知られている。しかし、表面に付着した個々の細菌が、自己組織化して微小コロニー形成(集合体であるバイオフィルム形成の第一段階に当たる)に至る仕組みについては十分に解明されていない。本論文では、大量細胞同時追跡アルゴリズムを用いて、新しく定着した表面上での各細胞の運動履歴を調べることにより、バイオフィルム形成の初期にPslが果たす新しい役割を明らかにした。この技術と蛍光Psl染色およびコンピューター・シミュレーションを組み合わせて用い、緑膿菌が表面を移動しながら、通過跡にPslを沈着させて菌跡を作り出し、その後にこの菌跡に遭遇した細胞の表面運動性に影響を与えて、正のフィードバックが生じることがわかった。実験とシミュレーションの両方から、分泌されたPslのクモの巣状の跡が、表面訪問頻度の分布を支配しており、これはべき乗則で近似できることが示された。このパレート型の挙動は、細菌集合体の自己組織化が資本主義的経済体制に類似したやり方で行われていることを示している。つまり、Pslの蓄積は「金持ちはさらに金持ちに」という方式で行われ、少数の「エリート」細胞のところに細菌群集内で産生されたPslが非常に多く集まることになる。誘導によりPslを産生するよう操作した株を用いて、Pslの局所濃度が分裂後の細胞運命を決定すること、またPslの局所濃度が高いと最終的にはエリート細胞が最初の微小コロニー形成の創始者集団として働くようになることがわかった。

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