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細胞:筋芽細胞融合の促進因子であることが新たにわかったホスファチジルセリン受容体BAI1とアポトーシス細胞

Nature 497, 7448 doi: 10.1038/nature12135

骨格筋は、前駆体である筋芽細胞が融合して多核性の筋繊維となることにより生じる。筋形成に関与する保存された転写因子やシグナル伝達タンパク質が複数同定されているが、上流の調節因子についてはそれほどよくわかっていない。本論文では、食細胞によるアポトーシス細胞の認識に関わることが知られている膜タンパク質BAI1が、筋芽細胞の融合を促進するという、意外な発見を報告する。筋芽細胞が融合する際には内在性BAI1の発現が増え、またBAI1を過剰に発現させると、ELMO/Dock180/Rac1タンパク質を介したシグナル伝達によって、筋芽細胞の融合が促進された。筋芽細胞融合の際には、筋芽細胞集団の一部がアポトーシスを起こし、BAI1のリガンドであることが判明しているホスファチジルセリンを放出した。アポトーシスを阻害すると筋芽細胞の融合が強く妨げられ、アポトーシス筋芽細胞を戻し入れると、再び融合が起こるようになった。さらに、ヒトの初代培養筋芽細胞にアポトーシス筋芽細胞を加えることにより、正常な成長条件下でも筋管の形成を誘導することができた。機構的には、アポトーシス細胞が健康な筋芽細胞と直接融合するのではなく、アポトーシス細胞が隣接する筋芽細胞と接触依存性のシグナル伝達を行い、健康な筋芽細胞どうしの融合を促進した。in vivoで見ると、Bai1−/−マウス由来の筋繊維は野生型の同腹仔のものよりも小さい。またBai1−/−マウスでは筋の損傷後の再生も障害されることから、哺乳類の筋形成にBAI1が関与していることは明らかである。これらのデータを総合すると、アポトーシス細胞は、ホスファチジルセリン受容体であるBAI1を介したシグナル伝達を引き起こして健康な筋芽細胞の融合を促進する、新しいタイプのシグナルであり、筋肉の発生と修復に重要な意味を持つことがわかる。

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