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構造生物学:mTORキナーゼの構造、反応機構と調節
Nature 497, 7448 doi: 10.1038/nature12122
mTOR(mammalian target of rapamycin)はホスホイノシチド3-キナーゼに近縁のプロテインキナーゼで、栄養や増殖因子に応答して起こる細胞増殖を制御しており、がんでは脱調節状態にあることが多い。今回我々は、ATP遷移状態模倣体、あるいはATP部位阻害剤と結合した、切断型mTORとmLST8(mammalian lethal with SEC13 protein 8)の複合体の共結晶構造を報告する。これらの構造から、典型的なプロテインキナーゼと非常によく似た触媒残基や触媒機構を持つ、本来的に活性なキナーゼのコンホメーションが明らかになった。その活性部位は、FKBP12–ラパマイシン結合(FRB)ドメイン、および触媒クレフトから突き出して阻害的に働くヘリックスによってかなり奥まった所に隠されている。mTOR活性化変異は、このような要素を支える構造的枠組上に位置しており、このキナーゼが活性部位へのアクセスの制限によって制御されていることがわかる。in vitroでの生化学実験により、FRBドメインが「門番」の働きをして、自身のラパマイシン結合部位と基質との相互作用により、アクセスしにくくなっている活性部位への基質の接近を認めることが示された。ラパマイシン–FKBP12は、基質補給の直接的阻害に加えて活性部位へのアクセスをも制限することで、キナーゼ活性を阻害する。この構造はまた、阻害剤の有効性や特異性の基盤となる活性部位の残基やコンホメーション変化も明らかにしている。

