進化:カンブリア紀層で見つかった、棲管を形成する腸鰓類
Nature 495, 7442 doi: 10.1038/nature12017
半索動物は海生動物の一群であり、単一種の漂泳性幼生形を除けば、蠕虫型の腸鰓類、および群体を形成し棲管を築いてその中に生息する微小な翼鰓類に分類される。半索動物は、棘皮動物とともに分岐群「水腔動物」を構成する。半索動物は多様性に乏しいが、特に咽頭に鰓裂があるため、新口動物の初期進化を解明するうえで重要な手がかりとなる。半索動物の系統分類は長年にわたって確定されずにいるが、その理由として、解剖学的構造が全く異なる腸鰓類と翼鰓類とを結びつけるような何らかの移行型動物が確認されていないことが特に挙げられる。そのため、この2群間の類縁関係についても議論が続いている。例えば、翼鰓類は祖先的な棘皮動物と同類視される場合がある。分子データからは、腸鰓類が側系統であり、ハリマニア類が翼鰓類の姉妹群であることが明らかにされている。最近の分子系統解析では、これまでの見方とは逆に、腸鰓類が半索動物の中ではおそらく原始的であることが示唆されているが、それ以外には原始的半索動物がどんなものかに関する指針はほとんど得られていない。さらに、半索動物の化石記録は、翼鰓類、中でも筆石類の包皮骨格にほぼ完全に限定されている。腸鰓類は保存されにくいために、その化石はきわめてまれであり、半索動物の系統分類に関しても、推定されているハリマニア類から翼鰓類への移行に関しても、手がかりが全く得られていない。今回我々は、カンブリア紀中期(第3統第5階)のバージェス頁岩で見つかった腸鰓類、Spartobranchus tenuis(Walcott, 1911)について報告する。この動物は現生ハリマニア類ときわめてよく似ているが、繊維質で分枝することもある管を伴うという点で、既知のすべての腸鰓類と異なる。我々は、この管が翼鰓類の包皮の前駆構造であり、翼鰓類は腸鰓類様の蠕虫動物から派生して小型化したとする仮説を裏付けるものだと考える。またこの化石は、包皮を獲得した後に小型化および摂餌用触手の獲得が起こったことや、おそらくカンブリア紀のエラナシフサカツギ類のFasciculitubusと同様に個体が集合して群体が生じたことも示している。カンブリア紀中期層における腸鰓類と翼鰓類の共存は、半索動物がカンブリア爆発の開始時に出現したことを示唆している。

