Letter

構造生物学:Mg2+を結合したE1状態にあるカルシウムポンプおよびサルコリピンの結晶構造

Nature 495, 7440 doi: 10.1038/nature11899

P型ATPアーゼは、生体膜を隔ててイオン濃度勾配を作るATP駆動イオンポンプであり、反応サイクル中に自己リン酸化過程があることが他のATPアーゼと異なっている。そのうちで最もよく研究されているのが筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA1a)であり、筋細胞の収縮後に弛緩をもたらすCa2+ポンプである。その大部分の反応中間体に関しては、結晶構造が決定されている。未解決の重要な構造の1つはE1中間体であり、Ca2+結合部位は空で高親和性を持ち新たな細胞質Ca2+を受け入れる準備ができている。Ca2+非存在下でpHが7以上の場合、このATPアーゼの大部分はE2(Ca2+に低親和性)ではなくE1状態にあり、mM濃度のMg2+が存在する場合には、Ca2+結合部位の1つを1個のMg2+がmMの解離定数で占めると予想される。このMg2+により反応サイクルは促進されるが、Ca2+結合なしにリン酸化は起こらない。今回我々は、外因性阻害剤なしでE2状態にあるSERCA1aの結晶構造に加えて、このE1·Mg2+状態にある天然SERCA1a(ウサギ由来)の3.0 Å分解能での結晶構造を報告し、リン酸転移の活性化シグナルの構造基盤を検討する。予想外のことに、Ca2+-ATPアーゼの小さな調節膜タンパク質であるサルコリピンが結合していて、E1·Mg2+状態を安定化していた。サルコリピンは、心臓でのCa2+調節におけるβアドレナリンシグナルの重要なメディエーターであるホスホランバンの近いホモログであり、筋肉による熱発生に重要な役割を果たしているらしい。我々はまた、サルコリピンを欠損した組換えSERCA1aの結晶構造を決定し、サルコリピン/ホスホランバンによる阻害の構造基盤について述べる。したがって、今回報告した結晶構造はカルシウムポンプ反応サイクルの構造的解明における空白部分を埋め、その生理的調節の理解のための確かな基盤を与えるものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度